老子との対話41
以前も話したとおり、僕は会社員時代、多くの営業マンに会っていた。
新規の営業マンの方が多い時は1日に3件。
それ以外にもメールや電話が立て続けにかかってきた。
膨大な広告予算をコントロールする責任者をしていたからだ。
記憶のキャパを超えてしまうくらい営業マンに出会うと、どのような営業マンが売れるのか?どのような営業マンが売れないかが分かるようになる。
売れる人は
戦わない
まさに「孫子の兵法」だった。
誤解しないでほしいのだが、孫子の兵法は必ずしも戦いをしろというものではない。
むしろ、戦わずして勝つことを勧めている。
あなたが同僚と口喧嘩したとしよう。
あなたは顔を真っ赤にし、声を荒げ、自分の意見を強く主張する。
相手も睨むようにして、あなたに主張をぶつける。
そのような口喧嘩をしたらどうなるか?
あなたはその口喧嘩に勝っても、本当の意味で勝ってはいない。それどころか、最悪の状況になる。
あなたと同僚との関係には亀裂が入る。
その後、お互いに引きづらないフリをしても、あなたも相手も引きづるかもしれない。
ひどい口喧嘩であれば、以前とは同じ関係には戻れないかもしれない。
消耗が激しいのだ。
孫子の兵法はそれを話している。
戦いは勝っても消耗が激しい。
だからこそ、戦わずして勝つことを勧めている。これが最善の策だ。
ビジネスも営業も同じだ。
あなたが営業マンで、まるで戦いに勝つようにして、僕に商品を売り込んだとしよう。
あなたが「買え買え」とうるさいから、「本当にうるさいな。仕方ないから1つだけ買うか」と僕が渋々と買うとしよう。
(僕はそんなに甘くはないけど)
でも、それで終わりだ。
次はない。少なくとも、僕は買わない。
「あの人は自分の都合ばかりだな」と相手に悪い印象のみが残り、二度と取引はしない。
良い営業マンは戦わない。
僕が接した最高の営業マンはまさにそれだった。
自然な形で僕の心に入ってくる。
そして、常に僕のことを考えてくれた。
僕の会社のことではない。僕のことだ。
これは非常に重要なことだ。
人は会社が第1ではない。自分のことが第1なのだ。だからこそ、その人のことを考え、その人の心に入り込むのは非常に重要だ。
自然とそのような営業マンには仕事をお願いするようになる。
何一つ、戦うことはなく、何一つ、疑うことなく、自然にだ。
老子は言う。
「世界じゅうで最も柔らかく弱々しいものが、実は世界じゅうで最も堅くたくましいものを思いどおりに走らせる。水が岩石を流すようなものだ。また実体のないものであってこそ、少しの隙間もないところまで入ってゆける。
(中略)
ことさらなしわざをしない『無為』の立場こそが有益であることを知った。
ことばに頼らない無言の教えと、ことさらなしわざをしない『無為』の利益とは、世界じゅうでそれに匹敵するものはほとんどないのだ」
参考:老子道徳経 下篇
最も柔らかく弱々しいもの
そして、私欲のない立場、そのような営業マンには僕も負けてしまう。
(余談だが、僕は取引先に非常に厳しいと言われていたのにだ)
そもそも彼らが戦わないのだから、僕は戦えない。勝ち負けもないのだ。
彼らはすっと僕の心に入ってくる。
もちろん、相手と接点を持つことは必要だ。
相手との接点を持たずにビジネスをすることは不可能だ。
でも、その接点を持つところも自然な形でつながる。
そして、接点を持ったら、「戦わない」こと。自分の利益ではなく、相手の利益を重視することだ。
相手はあなたのことを一番考えているわけではない。相手は自分のことを一番に考えている。
だからこそ、相手が最も興味があるその人自身のことを話すようにしてあげることだ。
相手の話を聞き、相手の問題を聞き、その解決策を話す。
それを自然な形で行われると、僕は身を乗り出し、「これはいいですね。どのくらいコストかかりますか?」と聞いてしまう。
でも、「こういうのどうですか?」と言われると、一瞬身構える。
「これから、売り込むのかな?」
そう思ってしまうのだ。
自然な形だ。
人の心に自然に入り込む能力は重要な能力だ。
僕らは人を相手にしている。
人がお金を持ち、人が僕らの商品やサービスを買ってくる。
だからこそ、人の心に自然に入り込む能力を手に入れることだ。その能力はあなたの将来を輝かしいものにしてくれるのだから。


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