「スティーブ・ジョブズは
世界最高の経営者か? 6」
このシリーズも第6回目。
ジョブズはよく言われているような「世界最高の経営者」ではない。
というよりもむしろ「世界最高の<経営ができる芸術家>」とお話しした。
まずは、いつものようにこれまでの復習からお伝えしたい。
(復習など必要のない方は読み飛ばして欲しい)
□復習
まず「芸術」に対するジョブズの「言葉」。そして、ジョブズと共に働いてきた仲間の「言葉」もご紹介してきた。
「芸術」「アート」「デザイン」「美しさ」「文化」など、芸術的価値観に対するジョブズの姿勢が伝わってくる言葉が非常に多い。
また、ジョブズのスタンフォード大学でのスピーチ。そのスピーチでアップルのMacintosh(MAC)の成功に繋がった「要因」をジョブズが1つだけ紹介したのだが、それがまさに
「芸術」だった
Reed大学中退後(中退したにもかかわらずReed大学で)ジョブズが学び続けたもの。それがカリグラフィーだった。カリグラフィーとは文字の芸術。
それらを徹底的に学ぶ。それは芸術やデザインを学ぶことにつながった。
10年後、最初のMacintoshをデザインする時に学んできたカリグラフィのノウハウを活かし、Macは美しいタイポグラフィ(文字)を持った最初のコンピュータとなる。
ジョブズは「カリグラフィーにはまることがなかったら、Macに複数のフォントや美しいフォントは存在しなかったかもしれない。」と言っていた。
でも、ジョブズが「芸術」「アート」「デザイン」につながるカリグラフィーににはまることがなければ、フォントどころか、アップルの製品も美しくなかっただろう。
それどころか、アップルは世界1の企業にはなりえなかったかもしれない。
アップルの成功の礎を築いたとも言われる「Apple II」を創り上げた時も同じだ。
当時は板金のケースに入っているものがコンピューター。
でも、ジョブズは美しいプラスチックに入ったパソコンを創り上げようとした。
その「デザイン」も極めようとした。
彼はそのデザインを高名なデザイナーのジェリー・マノックに依頼した。
(マノックはヒューレット・パッカード社のデザイナー)
デザイナーのマノックはこう言った。
一般的な話をすれば、設立数ヶ月の企業の製品など大抵は良くは思われない。
ましてや、大手企業の製品などと比べれば、圧倒的に外観が悪く見えるのが普通だ。
外観が悪ければ、見向きもされない。
しかし、「Apple II」は違った。
デザイナーのジェリー・マノックの言葉を借りれば、ほかの野暮ったい製品に比べ、すでに大量生産しているような製品に見せることができた。まさに芸術の勝利だった。
他の企業が技術にこだわっているところで、アップルは技術に加え、「芸術」を組み込んだ。それが勝利を呼び込んだのだ。
「価値が高いものと言うと何をイメージするか?」
土地や建物などの不動産かしれない。
またダイヤモンドなどの宝石類や金などをイメージする方もいるだろう。
もちろん、ゴッホの「ひまわり」のような美術品、芸術品などもあるだろう。
多くのものは価値の変動はあるが、既に価値があるも。
土地や建物などには既に価値がある。価値の変動はあったとしてもある程度の価値があるのだ。
ダイヤモンドや金も同じだ。
ところが美術品、芸術品は違う。
たった一人の人間。それがわずかな「筆やオイルや絵の具」。そうしたものから、生み出される絵なのだ。
「無から有を生み出す」どころではない。「無から圧倒的価値を生み出す」もの。
この「無から圧倒的価値を生み出す(可能性のあるもの)」ものこそ、私の考える、ビジネスの側面から見た「芸術」だ。
アルベルト・ジャコメッティのL’Homme qui marche Iは約1億430万ドル、パブロ・ピカソ Parisian boy smoking a pipe (painting)は約1億410万ドル。
これらはまさに無から圧倒的価値を生み出した芸術品の代表例だ。
「無から圧倒的価値を生み出す」芸術。
芸術はここ数十年。いや数百年の単なる流行のようなものではないのだ。
古代ローマの時代にも同じように芸術は存在した。
絵画、彫刻、建築において、「芸術」は存在していた。
その意味では、紀元後、少なくとも2000年もの長い間、人間と共に存在してきた価値のあるもの。
そして、絶対的なもの。それが「芸術」とも言える。
□復習終了
当初、アップルは「芸術」志向の人々に受けていた
その「芸術」を組み込んだアップルのコンピューターだからこそ、当初は「芸術」志向の人々に受けていた。
アップルについて、今のiPhoneやiPadをイメージされている方であれば、「多くの方に好まれる製品を生み出す企業」だというイメージがあるかもしれない。
でも、以前は違った。
一部のマニアックに好まれるコンピューターだった。
特に芸術家連中、クリエイターに好まれていたのだ。
実際、photoshopなどの画像系ソフトなど、クリエイティブ系のものは当初MACの方が圧倒的に使いやすかった。ますますクリエイーター連中が使うようになっていった。
顧客がデザインにうるさい連中だ。
それに答えるようになって行ったところもあっただろう。
外観だけではない。フォントに至るまで美しいコンピューター。
MACは高額なものだったが、美しさを求める人々を虜にした。
ここで少し話を変えよう。
「商品」について考えていきたい
これは2つの切り口で考えることができる。
1つが「品質」。
そして、もう1つが「価格」だ。
一般的に言えば、品質が高いものは価格も高い。そして、品質が低いものは価格も低い。
例えば、顧客から「300円くらいだ」と思われている「品質」の商品を「300円」という「価格」で売る。これが一般的なものだ。
その一般的なものをより訴求力を高めるためには「品質」を高めるか、「価格」を下げるか、シンプルに考えれば、この2つだ。
その「品質」を高める上で重要なのが「感覚」を大きく揺さぶることだ。
特に購入前の段階では、その「感覚」を揺さぶることが重要だ。
感覚とは「五感」
視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感だ。
特に今回の内容のような商品の場合、商品に触れずに感じることができる視覚と聴覚。
それに商品を触った時の感覚である触覚。
これらは非常に重要になってくる。
あなたがお店でiPhoneなどを選ぶ時、どのようにしているか?
iPhoneが飾ってあるところに行き、実際にそれを見て、そして、それを触る。
さらに音が聴けるなら、曲などを聴くこともあるだろう。
そして、数分から数十分で気持ちが決まって来る。
考えて欲しい。
まず見たのだ。つまり「視覚」だ。
そして、触った。「触覚」だ。
さらに、場合によっては聴く。「聴覚」だ。
これらの質を高めるものこそ「芸術」だ。
中身だけではダメなのだ
そもそも、中身は五感に伝わりづらい。
先ほどの数分から数十分の勝負の中で視覚や触覚に強烈に訴えかけるのは外観だ。
中身ではない。
そこは芸術品をつくるような意識が必要になってくる。
最初の段階で訴えるべきは人々の感覚に対してだ。
1971年
米国の心理学者がある法則を提唱した。それは人の行動が他人にどのような影響を及ぼすかというものだった。話の内容、口調や話の速さ。そして、見た目のうち、それぞれがどのような影響を及ぼすかを検証した法則だ。
最も影響を及ぼしたのは見た目などの視覚情報。それが55%の割合。
そして、口調や話の速さなどの聴覚情報が38%。話の内容などの言語情報がわずか7%だった。
ご存知のとおり、メラビアンの法則だ。
これは先ほどの「五感」のことを考えれば当然のことだ。
まず、接するのは「五感」なのだ。
そして、その情報が脳に送られる。
その時の感情が重要なのだ。
その感情に多大な影響を及ぼすのが「外観」だ。
そして、その「外観」を強烈に高めるもの。それが芸術だった。
「無から圧倒的価値」を生み出すことも可能な「芸術」
それをスティーブ・ジョブズ、いやアップルは使ったのだ。
次回、さらに詳しく説明していきたい。
追伸:五感の話は、食品などを扱う方であれば、味覚や嗅覚なども重要になってくる。
そこは注意していただきたい。顧客に試食していただいた時に味覚や食品のにおいなどが重要になってくるのだ。



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